天敵が害虫の繁殖力を増加させる。

小麦やトウモロコシなどの貯穀を食い荒らす害虫「オオツノコクヌストモドキ」のメスの繁殖力が、天敵「コメグラサシガメ」の捕食により増加することを、岡山大学、東京大学、東京都立大学による研究グループが発見。

一般的には、天敵によって害虫の繁殖力は抑制される。繁殖力の高い多くの卵を生むメスは、多数の卵を抱えることで捕食されやすくなる。オスでは大きなツノなど目立つ形質を持つ者が多くのメスと交配できるため、繁殖力が高いと考えられるが、目立つため天敵に発見されやすくなり、交配前に死ぬ確率が高くなる。このため、生き残ったオスとメスは繁殖力が低く、増殖率も低くなると考えられてきた。
オオツノコクヌストモドキのオスは、大きな大顎を持つ者がオス同士の戦いで勝利するため高い繁殖力を有するが、大顎の大きなオスは移動力が低く天敵に捕食されやすくなる。そのため天敵が同居する環境では大顎の小さいオスが生き残る。大顎の小さいオスの息子は、遺伝により頭が小さく腹部が大きい体型となる。この体型はメスにも遺伝するため、より多くの産卵が可能な、腹部の大きいメスが増殖し、結果として繁殖力が増加し増殖率が増加することとなった。
この研究結果は、生物農薬としての効果は、害虫の繁殖力への影響を精査する必要性を示しており、今後の害虫防除に関する応用研究に役立つと期待される。

参考リンク：岡山大学