捕食者の音と振動を活用した害虫防除。
害虫防除において、環境や健康への配慮から殺虫剤を使用できないケースが近年出てきている。代替となる天敵生物やフェロモン剤などは対象害虫が限定されており、広範囲の害虫に適用できる新しい防除法の開発が望まれている。
多くの昆虫は振動や音に敏感で、様々な場面でこの能力を利用する。捕食者の音や振動を察知して回避、振動を発して同種と集合、音で配偶者を認識するなどが挙げられる。音や振動は昆虫にとって情報としての機能を持つ。森林総合研究所は、振動を用いた害虫防除法の開発を進めている。
マツ材線中病を媒介する重要森林害虫であるマツノマダラカミキリは、低周波の振動刺激に対して行動の停止や回避行動を示すことが判明。これは、振動が捕食者の情報と認識され、回避行動を誘発することを意味する。また、マツノマダラカミキリはマツノザイセンチュウに感染して衰弱したマツに産卵する。マツが衰弱する過程で発する特異的な振動(自発振動)を寄主木の情報として認識することが示唆された。このことから、特定の周波数の振動を加えることでマツノマダラカミキリの産卵と摂食を阻害することができる。
今後、研究が進むことで音・振動を用いた防除技術が様々な害虫に適用されることが期待される。