昆虫が繭から成虫に変わる仕組みを発見。

これまで不明だった、昆虫が幼虫から成虫になる過程で繭の中で起こる神経と筋肉の「つなぎかえ」の際に、抗酸化酵素スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)が活性酸素(ROS)の発生を調節し、再構築に利用されていることが発見された。

昆虫は、繭の中で筋肉と運動神経の大規模な組み合わせの変更を行っている。幼虫の運動神経は、筋肉と接着していた末端(接合部)が部分的に細胞死を起こし、剥離する。次いで、新しく作られた神経末端と成虫の筋肉が「つなぎかえ」られ、再構築される。このつなぎかえが行われることで、昆虫は翅や脚を動かすことができるようになる。これまで、神経と筋肉の接合に関係する遺伝子は知られていたが、その仕組は不明だった。
昆虫は、繭になる際に体内でROSの産生量を増加させる。増加したROSは幼虫の組織を壊し、成虫の組織を作る材料として使われる。このときにROS産生を調節するのが、抗酸化酵素のSOD。研究では、小麦貯穀害虫の「コクヌストモドキ」が持つSODのひとつ「TcSOD6」に着目。繭期の後半に、RNA干渉でTcSOD6の機能を抑制すると、正常な神経の形成が阻害され、成虫になっても脚を正常に動かせなくなった。このことから、TcSOD6が、神経と筋肉の再構築に必要があることが分かった。
今後は変態期の神経筋接合のSODによる制御の仕組みの全貌を解明し、昆虫の移動を制御する新手法開発などに応用し、害虫管理の一助となることが期待される。

参考リンク:プレスリリース(東京農工大学)