不良土壌での農業を可能にする次世代肥料農業用鉄キレート剤「プロリンデオキシムギネ酸（PDMA）」。

世界の陸地の約3分の1を占める、農地に適さないアルカリ性不良土壌での農耕を可能にする農業用鉄キレート剤「プロリンデオキシムギネ酸（PDMA）」を、徳島大学、愛知製鋼を中心とした共同研究グループが開発。

アルカリ性土壌では、鉄分が水に溶けない水酸化鉄として存在しているため、植物は根から鉄分を吸収することができず鉄欠乏症を引き起こし枯れてしまう。アルカリ性不良土壌で水酸化鉄を溶かす農業用の鉄キレート剤の開発がこれまでも行われてきたが効果が弱く、土壌に残留する問題があった。
イネ科の植物は根から天然の鉄キレート剤であるムギネ酸を分泌し、鉄分を効率よく吸収する。研究ではムギネ酸の類縁天然物であるデオキシムギネ酸（DMA）の化学合成法を開発。アルカリ性不良土壌にDMAを投与して鉄欠乏症の回復を実証したが、DMAの化学合成に必要なL-アゼチジン-2-カルボン酸が非常に高価なため、多大なコストが障壁となった。そこで別の安価なアミノ酸で代替する研究に着手。結果、L-アゼチジン-2-カルボン酸をL-プロリンに変更した「プロリンデオキシムギネ酸（PDMA）を開発。PDMAの合成コストはDMAの1,000分の1〜1万分の1まで下げることができた。
PDMAはイネだけでなく、トウモロコシや大麦などすべてのイネ科植物にも有効で、土壌中で1ヵ月かけて分解されるため、長期的に効果を維持しつつ環境に優しい肥料であることが判明。アルカリ性不良土壌の試験圃場での実験では既存鉄キレート剤の約10倍の効果があり、コメの収穫ができた。
今後は世界の土壌に応じた投与条件の精査や、製造法の検討を進め、世界の不良土壌の緑地化と食料の安定確保を目指す。

参考リンク：徳島大学