堆肥を長期連用で、化学肥料削減の可能性。
化学肥料と堆肥をそれぞれ別の区画に施用、土壌の窒素固定活性(※1)と細菌叢(※2)に及ぼす影響を調査。
堆肥を長期間にわたって圃場に撒くことで、窒素を固定する細菌叢の多様性と窒素固定活性が高くなった。
植物の成長に必要な窒素は、自然界ではアンモニア合成を介して供給される。この時、窒素を固定しアンモニア合成に関わるのが、窒素固定細菌が持つ「ニトロゲナーゼ」という酵素。水田でどの資材を施用すると細菌の持つニトロゲナーゼを活性化させるか、また細菌叢に与える影響などは明らかになっていない。そこで、1991年から長期間続けてそれぞれ牛ふん堆肥と化学肥料を撒き続けている水稲の研究圃場の土壌を採取し、解析を行なった。
長年堆肥を撒いた土壌では、化学肥料施用の土壌より細菌叢の多様性は増加し、またニトロゲナーゼの活性も高くなった。一方アンモニアの含量は減少。ニトロゲナーゼはアンモニアの濃度が高いとその働きが抑えられるため、土壌のアンモニア含量の低下は窒素固定細菌の増殖に有利に働くと考えられる。
このことから、堆肥を撒いた土壌では、窒素固定を介して稲により多くの窒素が補給される可能性が示唆され、化学肥料の削減に結びつくと期待される。
※1 窒素固定活性:細菌によって空気中の窒素ガスをアンモニアに変換する反応の速度を表す指標。
※2 細菌叢:特定の環境に生息する細菌の種類とその構成比。
参考リンク:プレスリリース(宇都宮大学)