食料自給率、「いも類を中心とした作付け」想定なら、推定エネルギー必要量を上回るが、「米・小麦・大豆を中心とした作付け」想定だと下回る。

世界の食料需給が中長期的に逼迫も懸念される中、食料の多くを海外に依存している日本は、食料安全保障の観点から、国内の農地等を最大限活用することで、どの程度の食料が得られるのかという食料の潜在生産能力(食料自給力)の評価は重要。
食料自給率は、現実に生産された食料作物の生産実績をもって算定されることから、非食用作物が栽培された農地の食料潜在生産能力を評価できない。一方、食料自給力指標では、現実と切り離された一定の仮定の下で、すべての農地に米・小麦・大豆やいも類を中心に作付けすることを想定した試算を行うことで、非食用作物が栽培された農地と、荒廃の程度が比較的軽い再生利用可能な荒廃農地も含め、食料の潜在生産能力を評価し、指標に反映させる。
2017年度の食料自給力指標の農地は444万ha、再生利用可能な荒廃農地は10万haで、これらの面積を前提として、「米・小麦・大豆を中心とした作付け」と「いも類を中心とした作付け」の試算を行っている。
2017年度の食料自給力指標は、「米・小麦・大豆を中心とした作付け」では前年度に比べ1人1日当たりで8kcal上昇の1,814kcal、「いも類を中心とした作付け」では3kcal上昇の2,647kcalとなった。日本人の平均的な1人1日当たりの推定エネルギー必要量2,145kcalと比較すると、供給熱量を重視する「いも類を中心とした作付け」ではこれを上回る。一方、より日本人の食生活に近い「米・小麦・大豆を中心とした作付け」ではこれを下回る結果。農地面積の減少等がその主要な要因。
将来の世界の食料需給に不安定要素が存在する中、優良農地を確保し、需要に応じた生産や海外農産物市場の獲得等により、農業の振興を図っていくことが、食料自給力の維持向上につながる。担い手への農地の集積・集約化を進め、荒廃農地の発生防止と再生を図り、新品種・新技術の開発・導入、輪作体系の適正化や排水対策等の基本技術の励行により単収の高位安定化を図る必要がある。