「ウメ輪紋ウイルス(PPV)」侵入・拡散する仕組みを解明。

梅や桃に被害を与える「梅輪紋ウイルス(プライムポックスウイルス=PPV)」。2009年に初めて侵入が確認された、この重要植物病原体が日本に侵入し拡散する仕組みを、東京大学大学院農学生命科学研究科の研究グループが明らかにした。
大規模で高精度な分子疫学解析により、PPVの侵入が西ヨーロッパから2度にわたって起きていたこと、侵入後にそれぞれ関東と関西を中心に国内各地へと分布を拡大したことが分かった。さらに、関西のPPVは日本への侵入時に一時的に弱毒化し、侵入後に本来の病原性の回復と多様化を伴いながら拡散していったことも解明された。
PPVは梅、桃、スモモなどの葉に斑点や輪紋を生じさせ、品質を低下させるウイルス。これまで12都府県で発生が確認されている。
11都府県40市町村から200以上の検体を採取し、その全遺伝情報を調べ、特定の遺伝子部位が感染力や症状の激しさなどの変化をもたらすことを突き止めた。関西に侵入したウイルスが、この部位のアミノ酸の変異により弱毒化し、その後国内で拡散する中で病原性を強めるよう変異したと考えられる。弱毒化したウイルスは検疫などで見逃される可能性が高くなり、分布拡大に有利に働いてしまう。極微量の病原体でも検出可能な検査技術の開発・普及が必要。