ダリアのウイルス検定法と優良株確保のための「ダリア先進技術マニュアル」。

ダリアは日持ちの悪さから永らく消費が低迷していたが、近年、日持ちの良い冬春切り作型が広まり始めたことから、注目を集めている。その一方で、ウイルス汚染による生産性の低下が問題になっていた。
農研機構は「マルチプレックスRT-PCR法を」用いることで、ダリアに感染するトマト黄化えそウイルス(TSWV)、ダリアモザイクウイルス(DMV)およびキク矮化ウイロイド(CSVd)の罹病性検定を同時に行う方法を確立した。
ダリアには数種のウイルス(ウイロイド)が感染することが知られており、特に DMVとTSWVによる被害が大きい。一見すると健全なダリア植物体のウイルス検定でも、かなりの高率で各種ウイルスの感染が確認される。これらウイルスによる病害は、一度感染すると治療が困難で、罹病株の抜き取り処分と感染予防を徹底するしか対策がない。
一般的な感染予防としては、健全な種苗の導入、ハサミなど刃物の消毒、アザミウマ等の害虫防除が重要となるが、まずウイルスに感染していない優良な種苗の確保が必要となる。
そこで奈良県農業研究開発センターでは、茎長培養によるウイルスに感染していない優良種苗の作出と、これらの挿し芽による大量増殖法を開発し、茎長培養苗からの球根の大量増殖と挿し芽苗を利用した冬春切りの「ダリア先進技術マニュアル」を作成した。
茎頂培養苗を親株に用いた挿し芽では発根と初期生育が優れるため、挿し芽増殖の効率が極めて良く、これを用いた増殖用種球の生産が容易になることが明らかになった。培養ビンで大量増殖する従来法に比べて、茎頂培養苗を親株として網室内で挿し芽繁殖する方法では、培地作成、無菌操作、順化作業が不要となり省力的となるだけでなく、1世代の継代に必要な期間も約5~6週間から約3週間に短縮できるようになった。
また、適正な抜き取り管理や害虫防除を実施していれば、茎頂培養から4~5年の球根繁殖を繰り返した集団でも春の萌芽は良好で、茎葉の生育量、切り花品質および球根収量が在来球根集団よりも優れることも明らかになっている。
このため、いたずらにウイルスの再汚染を懸念するのではなく、数年単位での計画的な茎頂培養苗導入によって、産地の生産力を大幅に高めようという考えの下に作られた「ダリア先進技術マニュアル」では奈良県農業研究開発センターで行っている方法を、ウイルス検定法「マルチプレックスRT-PCR法」を含めた作業手順ごとに紹介している。