ハダニ類に向けた次世代農薬、液体を摂取させる新しい人工給餌システムの開発。

ハダニは世界的に深刻な農業被害をもたらし、化学合成農薬の殺虫成分に抵抗性を持つ数が最も多く、従来とは異なる作用を持つ次世代農薬の開発が進められている。

ハダニ防除の次世代農薬の開発では、遺伝子発現を抑制するRNA干渉(RNAi)が注目されている。RNAiは、害虫に特定の二本鎖RNA(dsRNA)を食べさせることで、害虫の発育に関係する遺伝子を抑制することで殺虫効果を生む。抑制効果のあるdsRNAを特定し、殺虫効果を高めるためには、開発段階で害虫に効率よくdsRNAを食べさせる人工給餌システムを使い、その効果を観察する必要がある。
ハダニは植物の葉の細胞に口針を刺し、細胞の中身を吸汁する。このため、人工給餌システムには液体を口針で摂取させる仕掛けが必要。従来はパラフィン製の伸展性フィルムで液体を包む方式が取られていたが、この方式ではハダニが摂食可能な表面積が小さいため、多量のdsRNA溶液が必要になるのが問題だったが、新たに開発された人工給餌システムは、葉の細胞に見立てたマイクロメッシュと、それを包む薄膜フィルムで構成されている。ハダニ1頭に用いるdsRNA溶液の量は、従来の物と比較して約30分の1まで減らすことができた。これにより高効率な実験が可能となる。
今後このシステムは、次世代農薬開発の基盤技術としての利用が期待される。

参考リンク:ニュースリリース(東京農工大)