捕食者のアリがいる自然の中でハダニの密度は低く抑えられる。アリの足跡物質を避ける習性。

大豆やナスなど1,000種以上の農作物を食害し化学農薬の耐性をつけるハダニが、アリの足跡に残る化学物質を避けることを京都大学などの研究チームが発見。
ハダニがアリを回避するメカニズムを応用することで、人体と環境に無害な天然物質によるハダニ防除が可能になる可能性が出てきた。

ハダニは約10日で世代交代し、ヒトの千倍以上の速度で進化するため、新しい農薬を開発してもすぐに耐性をつけてしまう。ところが、捕食者がいる自然の中ではハダニの密度は低く抑えられている。
アリは、地上のいたる所を歩き回り、ハダニなどの餌動物を無差別に捕食する。足が遅いハダニはアリに狙われたら助からないため出会う前に避けるとの予想から、アリが縄張り認識などに使う足跡物質に着目。ハダニを捕食するアミメアリと捕食しないクロヤマアリの足跡とその抽出物を用いて実験した。
アリが歩いて足跡をつけたマメの葉片と足跡のついていない葉片を並べたところにハダニを放つと、捕食するアミメアリだけでなく捕食しないクロヤマアリの足跡も避けた。また、足跡物質を抽出したものでも避けたため、ハダニはアリの足跡物質を避けることが実証された。
今後は、ハダニに限らず農業害虫の発生を抑える仕組みを解明、応用することで、化学農薬に頼らない防除法を確立していく予定。

参考リンク:研究成果(京都大学)