土壌改良技術でダイズ増収、低縮合リグニン活用。

花王マテリアルサイエンス研究所は、粘土質土壌に低縮合リグニンを混ぜて土を適度な塊にし、空気を多く含む土壌に改良して大豆の収穫量を上げる技術を開発した。
今回の研究では、食糧供給の観点から主要作物である大豆に焦点を当て、単位面積あたりの収穫量を上げる技術を検討した。現在、日本を含むアジアで稲作から転換して大豆栽培を行なっている場所が多くあるが、稲作から転換した土壌は一般に肥沃である一方、粘土質で排水性が悪く根に十分な空気が供給されないため、大豆の生育が悪いという課題があった。
そこで、粘土質の土をある程度の塊にして(団粒化)、空気を含むすき間をつくることに挑戦、ここで「植物組織を結合して構造を強化する性質」を持つリグニンに着目した。一般的にバイオマスからリグニンを分離するときには前述の性質が損なわれる傾向があったが、花王ではこの性質を維持したリグニン(低縮合リグニン)を分離することに成功。この低縮合リグニンを土壌に混ぜることで土が適度に塊になり、空気相が増えた。
大豆品種「フクユタカ」を用いてガラス温室(和歌山県)での試験を行なったところ、低縮合リグニンを加えた土壌はそうでない土壌に対して出芽率が上がり、また、出芽後の大豆を育てたところ、低縮合リグニンを加えていない土壌よりも根の張りがよくなることも確認した。
さらに、宮城県での圃場試験を大豆品種「エンレイ」を用いて実施したところ、低縮合リグニンを加えた土壌はそうでない土壌に対して、種を播いてから収穫までの期間を通じて土壌中に空気を十分保っており、収穫量が30%以上増加することを確認した。