収穫後でも、傷ついた植物からのにおいで葉野菜や果実を長持ちできる可能性。
龍谷大学とパナソニックが、切り花や収穫後の植物などの「植物間コミュニケーション」に関する研究を行った結果、収穫後の植物でも「植物間コミュニケーションが行われていること」が明らかになった。
「植物間コミュニケーション」とは、植物が病害虫に害された際に発生するにおいを、同種の別個体が感じ取ることで、その病害虫に対して抵抗性を持つようになることをいう。この反応について、これまでは根付いている植物の例しか報告されていなかったが、この研究により、「収穫後でも植物間コミュニケーションがある」ことを世界で初めて明らかにした。収穫後でも、この反応を利用して人工的に抵抗性を持たせることができ、輸送等で商品を長持ちさせることが可能になる。
また「ジャスモン酸経路」以外の防衛経路が収穫後にも発動していることを示唆している。ジャスモン酸経路とは、ジャスモン酸というホルモンに反応して病虫害・傷害に関わる遺伝子群や根の伸長阻害を制御する経路のこと。
つまり、傷ついた植物から放出されるにおいを、別個体の植物が受容すると、その植物は病害虫に対して抵抗性を持つようになるという。根付いている植物体の葉がにおいを受容することで抵抗性を持つことは知られていたが、収穫後においても、においを受容させると病害虫の抵抗性を獲得できるのであれば、葉野菜や果実を長持ちさせる方法の一つになる可能性がある。
研究では、傷ついたときに緑色植物が出す青臭いにおいの成分を収穫したイチゴに受容させた。その際、イチゴに最もよく発生する灰色かび病に対する抵抗性を調べるため、灰色かび菌を増殖させた培地で、においに1日さらした結果、これらのにおいを受容したイチゴでは、発症する期間が伸びた。
においそのものには灰色かび病菌を抑制する効果はない。イチゴがにおいを受けて耐病性を高めるのは、一般的に知られている植物ホルモンのジャスモン酸とは異なる仕組みによるものとみられる。また、遺伝子発現を調べた結果、収穫後のイチゴは、一般的な植物ホルモンのジャスモン酸経路の防衛に依存しているのではなく、別のストレス関連のタンパク質が関与していることが示唆された。