有機・減農薬で水田希少生物や害虫の天敵が増えることを立証。
農研機構をはじめとする研究グループは、有機栽培または農薬節減栽培を行う水田と、行わない水田(慣行栽培の水田)の両方で生き物の調査を全国規模で行い、種数と個体数を比較した。
その結果、有機栽培の水田は、慣行栽培の水田と比較して、絶滅のおそれのある植物の種数や、害虫の天敵であるアシナガグモ属のクモ、アキアカネ等のアカネ属のトンボ、トノサマガエル属のカエル、およびサギ類などの水鳥類の個体数が多かった。農薬節減栽培の水田も、慣行栽培の水田よりも植物の種数およびアシナガグモ属の個体数が多い一方で、ニホンアマガエルは少ないことがわかった。またニホンアマガエルとドジョウついては、化学肥料や化学農薬を減らすことよりも、個別の管理法が個体数に大きく影響することが判明。
農業は食料や生活資材を生産するだけでなく、農地やその周辺における多様な生物の保全を含む多面的な機能をもっていて、国民全体がその恩恵を受けている。有機栽培や農薬節減栽培などの環境保全型農業は、生物に配慮した持続的な農業生産を実現するための手段の一つとして、注目されている。しかし、その効果を科学的に検証する研究は一地域の事例研究にとどまっており、広域的な水田の生物多様性の調査に基づく検証は実施されていなかった。