国産ドローンを政府が支援、資金調達優遇へ法整備。

政府は大容量データを瞬時に送れる「5G」通信網の普及から、2022年度にドローンの飛行を人口集中地区でも認める方向で、環境整備を進めている。上空から撮影した高精細映像の送受信が可能になれば、産業や農業、測量など用途は増える。
現在、ドローン市場は中国製が大半のシェアを握っている。世界のドローン市場の約7割を中国のDJI社が占め、残りの市場を中国やフランス、米国などの多くの企業が分け合う形。
アメリカ国土安全保障省は中国製ドローンについて製造元に飛行データを無断で送っている可能性があると警告。安全保障上の理由から中国製ドローンに対して米政府は強い懸念を持つ。日本政府関係者もリスクを指摘している。
日本でドローン開発を手掛ける企業はあるが中小規模が多く、これから海外の大手メーカーと競合できるようになるかどうかはまだわからないが、政府は技術力の底上げとともに、政府調達による需要の創出で生産効率を引き上げ、競争力の向上を狙う。
支援策として、ドローンや5G基地局などの開発・供給や導入を促進する法案を国会に提出。「特定高度情報通信技術活用システム(仮称)」について整備促進の指針を示し、サイバーセキュリティーを確保しながらの開発や供給を進める。
企業が指針に沿った事業計画を提出し、政府が認定すれば、日本政策金融公庫による低金利貸し付けや信用保証協会の保証拡大などの優遇措置を受けられる。認定要件は情報漏洩に対する安全性や供給の安定性、国際規格の採用などのオープン(開放)性など。
また、政府調達用に安全性の高いドローンを研究する企業には資金を出す。中国製が普及する背景には価格競争力があり、低コストで高い飛行性能を持つ機体を量産できる技術も後押しする。
災害対策やインフラ点検など政府調達も拡大する。2020年度から全都道府県の消防本部にそれぞれドローンを配備する。これにより台風などの災害時に車や人が進入しにくい場所でも被害を把握できる。海上保安庁は、2020年度から救難現場の撮影や警戒監視に活用している中国製ドローンを、国産を含め他の機種に替える。
政府の規制改革推進会議は、現状では安全性を保つため、法律で定めた目視や打音などの検査を必要とする道路や橋などインフラ点検の原則を緩和し、ドローンやセンサーでの代替を可能にすることを議論する。