短期間で育種できる技術開発。無害ウィルスを活用。

花きや果樹などに感染させても無害なウィルスに開花を促す遺伝子を組み込むことで、通常より早い時期に花を咲かせる技術を、岩手大学次世代アグリイノベーション研究センターが開発。
花きや果樹、ウリ科など広い種類に感染でき、無害な「リンゴ小球形潜在ウィルス(ALSV)」。これに開花を誘導するフロリゲン(FT)たんぱく質を作る遺伝子を組み込み植物に感染させると、開花を誘導することができる。
研究に使われたリンドウは、通常春に播種した苗はその年には花をつけず、越冬させ翌年の夏から秋にかけて開花する1世代2年となる。この技術を使うことで、1世代を6カ月へと4分の1に短縮することに成功した。これを活用し、栽培は容易だが花が開花しないエゾリンドウと開花するササリンドウの交配で、栽培しやすく花が開くエゾリンドウの新品種を3年で作った。今までの育種なら10年かかるものを、大幅に短縮することができた。
この技術は、遺伝子組換やゲノム編集とは異なり、育種期間にだけ遺伝子を組み込んだウィルスを使うため、できた品種は特別な許可を受けることなく野外での栽培が認められる。すでに今回育種されたエゾリンドウは屋外栽培試験が始まっている。また、マメ科やナス科、ウリ科などに応用できる高速育種技術として注目されている。