植物の茎が伸長を開始する仕組みを、イネを使った実験で発見。
これまでは謎だった植物の茎が伸長を開始する仕組みについて、茎を伸ばす際にアクセル/ブレーキとなる因子を発見。今後イネ科の草丈を人為的に制御する技術への応用が期待される。
茎の長さは、植物の環境適応に深く関わる。イネやコムギなどでは、風雨で倒れないよう茎を短くする品種改良が行われるなど、人為的な制御は重要な育種目標ともなる。これまで、茎の伸長を制御する仕組みは謎であり、約50年前に茎伸長の開始を制御する因子の存在が提唱されたものの、実態は未解明のままであった。
イネ科の茎は、植物の生長を制御する植物ホルモン「ジベレリン」により伸長が促進される。研究チームは、一般的な水田で栽培されるイネと、東南アジアで栽培される、洪水環境でも茎を伸ばして生き残る「浮イネ」を用いてジベレリンと茎伸長の開始時期の関係を調査。結果、浮イネは若い時期にジベレリンを投与すると直ぐに伸長を開始するが、一般的なイネは伸長しないことが分かった。そこでこの違いを制御する因子を探索、名古屋大学を中心とした共同研究グループがアクセル役とブレーキ役に相当する因子を発見。一般的なイネでは、若い時期にはブレーキ役の因子が働き、茎の伸長を止めていることが分かった。
今後は、この結果を応用し、高収量の浮イネ品種の開発や、環境変化に応じてイネ科植物の草丈を調整する技術の確立が期待される。
参考リンク:プレスリリース(名古屋大学)