ジャガイモ線虫を通せんぼ。北海道でタイヤへの高圧噴射を確実にした車両洗浄装置開発。

十勝産業振興センターは、少子高齢化に伴う人材不足の解消を図るため、電子制御・画像処理技術を応用、地域が抱えるさまざまな課題を解決するため、農業機械や食品加工機械、産業用機器など多岐にわたる分野で技術支援に取り組んでいる。「画像処理技術を応用した車両洗浄装置」は、この財団と北海道芽室町の建設会社『株式会社北土開発』が共同で開発したもの。
車両洗浄装置を開発するきっかけは、『北土開発』が農業関係者から「ジャガイモなどに被害を与えるシストセンチュウ対策のために、タイヤの溝の中までしっかり洗うことができる洗車設備を作ることができないか」と相談を受けたことだった。土壌に含まれる病害虫「シストセンチュウ」が、農場に出入りするトラックのタイヤの溝などに付着すると、作物の生産現場に病気が広がり、作物の大幅減収につながる。シストセンチュウは、直径約0.6㎜の太さで、堅い殻で守られているため、耐薬性があり、最も有効な対策は「タイヤについた土壌を、徹底的に洗い落とすこと」。
しかし、タイヤをしっかり洗うためには、手間と時間がかかる。特に、収穫時の製糖工場などでは、1日に500~1,000台のダンプカーが出入りするため、1台ずつ停車させてタイヤの洗浄を行うことは現実的ではなかった。これまでも車両が走行状態のまま洗浄する装置はあったが、車両検知後に一定時間水を噴射するという単純な装置がほとんどで、この方法では、タイヤだけでなくホイールベース間の車体も洗浄してしまうため、シストセンチュウ対策としては適切ではなかった。
そこで『北土開発』は、2年前から車両は走行状態のまま、タイヤに付いた土壌を確実に落とす洗浄装置の開発に乗り出した。最新の画像処理技術を用いて、動いている車両のタイヤを自動検知するのが特徴。車両の速度に合わせて車両側面やタイヤに水を噴射。確実にタイヤを洗う。大型トラックのダブルタイヤの隙間も自動で高圧洗浄できる。
開発中の装置は、低速の車両が走り抜ける際に、水を噴射してタイヤやタイヤ回りを洗う。装置への侵入口付近に取り付けたカメラでタイヤの形を捉え、車両の侵入を検知。大型車や中・小型車も判別する。
前洗浄では、循環水を床面に散水し、タイヤの走行面をぬらす。前洗浄をした後は、精密洗浄エリアで高圧水を32個のノズルから噴射。左右の両方向から噴射することで水圧を高め、タイヤ側面や走行面だけでなく、ダブルタイヤの隙間の高圧洗浄を可能とした。車両の下部やタイヤをめがけて噴霧するためフロントガラスや荷台の農産物に水がかかりにくく、汚れにくいのも特徴。後洗浄エリアでは床面に消毒液などを散水し、走り抜けるタイヤの走行面を除菌する。車両が通過した後は、後洗浄エリアを水で洗い流す。洗った後の水は、泥の層で油分などを分離し、上澄みを前洗浄に再利用する。泥などは別に処理する。
現在は洗浄試験を重ね、近隣の畑作農家の意見も踏まえて開発を進める。来春の発売を目指している。