モザイクウイルスを遺伝子レベルで分解。大豆の抵抗性仕組みを解明。

農研機構と佐賀大学は、植物がもつ新たなウイルス防御機構を大豆から発見。ある種のウイルスは、生物の免疫機構から逃れるため、感染した細胞内に「隠れ家」を作り、そこでゲノムを増幅する。今回の研究では、ダイズモザイクウイルス抵抗性遺伝子「Rsv4」から作られる「Rsv4タンパク質」が、ウイルスの「隠れ家」を見つけ出してウイルスゲノムを分解して、感染を防いでいることを明らかにした。さらにこの仕組みを応用して、さまざまなウイルスの増殖を抑制する人工タンパク質の作成に成功した。
ダイズモザイクウイルス(SMV)は大豆に感染すると収量や品質の低下を引き起こす。防除手段としては、古くからSMV抵抗性の大豆品種が育成されてきた。しかし近年、従来利用されてきたSMV抵抗性遺伝子が効かないSMV変異株が出現し問題となっている。
研究チームは、変異株を含む広範囲のSMVに有効な大豆のSMV抵抗性遺伝子「Rsv4」を特定し、その遺伝子から作られる「Rsv4タンパク質」が、これまで知られていない全く新しい仕組みでSMV感染を防ぐことが明らかに。Rsv4タンパク質は、SMVの「隠れ家」を見つけ出してウイルスゲノムを分解することにより、ウイルス感染を防いでいることを解明した。
この仕組みを応用して、トマトのトマトモザイクウイルスや多くの植物に感染するキュウリモザイクウイルスなど、大豆以外の作物で問題になっているさまざまなウイルスに対して、ウイルスの「隠れ家」に忍び込んでゲノムを分解する人工タンパク質を作製し、これらのウイルスの増殖を抑えることにも、実験室レベルで成功。この成果は、ダイズモザイクウイルス抵抗性ダイズ品種の開発に役立つだけでなく、さまざまな農作物のウイルス病に対する新たな防除法に繋がることが期待できる。