低コストの農地パトロール方法を考案。

農地利用状況調査(農地パトロール)を効率化する補助ツールとして注目されているスマホやタブレット。導入例が増えつつある一方で、システム構築のための技術的な委託費などに二の足を踏む農家も多い。そこで農研機構では、既存の地図ソフトや地理情報システム(GIS)を活用し、低コストで操作しやすい調査手法マニュアルをウェブサイトで公開している。
荒廃農地の所在などの調査結果を端末にデジタルデータで記録するのではなく、紙に印刷した地番図やノートなどに手書き記入する点が、この手法の特徴。デジタルとアナログの組み合わせで、モバイル端末の操作に慣れていない高齢の農業者でも扱いやすいという。
パトロールの際は、タブレット(iPad)の画面に現在地周辺のグーグルアースによる航空写真を表示して現地調査を進める。この航空写真上には、農地の筆界を表す図形(筆ポリゴン)が重ねて表示される。現在地が表示される他、筆ポリゴンをタップすると農地の地番や大字などが確認できる。荒廃区域が見つかればA・B分類を示す目印を紙の地番図に書き込むか、ノートや野帳などに地番や大字を記入する。
専門業者への委託コストを抑えるため、航空写真や筆ポリゴンの表示には無料で利用できるモバイルGISアプリ「iGIS」を活用。iGISは、グーグル社の地図ソフト「グーグルアース・プロ」に掲載されている航空写真をオンラインで表示し、それを背景にしてさまざまな地理情報を可視化するアプリ。30万もの筆ポリゴンをセットしてもスムーズに動作する。ただし、iGISはiPadやiPhoneといったアップル社のモバイル端末でしか使えないのが難点。
アプリで使う筆ポリゴンのデータ作成は専門業者などに依頼しなければならないが、専用のシステムを一から作るよりも安価な委託費で済むという。専門業者などへの依頼時には、地番図のGISデータに加え、農地情報公開システム(全国農地ナビ)用に準備された農地台帳データを用意する必要がある。これらを基に、台帳に大字・地番が記載されている農地の筆ポリゴンを既存のGISで作成し、iGISにセットする。
農研機構・農地利用ユニットでは、農業委員会などの利用者向けの他、GISデータ作成用に技術者向けのマニュアルも併せて公開している。