除草剤で枯れないイネの遺伝子を発見。

埼玉大学大学院理工学研究科の戸澤譲教授と農研機構の共同研究グループは、「コシヒカリ」などの日本型イネが有する除草剤抵抗性遺伝子を発見し、そこにコードされるタンパク質が複数の除草剤を不活性化する仕組みを分子レベルで解明した。
これまで国内で使われている主要なイネ用の除草剤が、家畜の飼料用イネの一部を枯らしてしまうことが問題となっていたが、埼玉大と農研機構の研究チームは、ある遺伝子を働かせればイネが除草剤で枯れないようにできることを発見した。
「トリケトン系」除草剤は雑草を減らす一方、コシヒカリなど主要な食用のイネを枯らさないことから、国内の稲作で広く用いられている。ところが家畜の飼料用のイネの一部は、この除草剤で苗が枯れてしまうものがあった。この除草剤で枯れるイネと、コシヒカリのように枯れないイネの遺伝子を比較し、除草剤への抵抗性に関わる遺伝子を探した結果、除草剤で枯れるイネでは「HIS1」という遺伝子が欠けていることを発見した。除草剤に弱い飼料イネなどの一部の稲品種では、HIS1遺伝子が機能を失っていること、さらにはこの機能欠損型HIS1遺伝子が東南アジアの稲品種に由来することを突き止めた。この遺伝子が働くと、除草剤で枯れなくなった。
単一の除草剤とその抵抗性遺伝子の組合せに依存する作物栽培は、その除草剤に抵抗性を持つ雑草の繁茂につながる。しかし、除草剤と抵抗性遺伝子の組合せを増やせるなら、より多種類の雑草を対象に、水田での繁茂を有効に抑制できる。
遺伝子HIS1を利用すると、交配育種により、除草剤で枯れないイネを計画的につくることが可能。さらに、各々の作物に固有なHIS1に似た遺伝子情報を利用し、幅広い作物への展開も期待される。