道管を丈夫にする物質が、植物を乾燥から守る。

植物の体内で水分を運ぶ管「道管」を構成する細胞壁に含まれる高分子「リグニン」が、乾燥した環境下で道管の崩壊を防止することがわかった。
今後、乾燥に強い植物の育種に役立つことが期待される。

植物の道管は、管状要素(TE)と呼ばれる細胞が連なることで長い筒状の組織を形成している。TEの細胞壁には複雑な構造を持つ「リグニン」が蓄積しており、水を運ぶのに必要な強度や耐水性を道管に与えている。このリグニンの役割を調べるため、シロイヌナズナを材料に実験を行ったところ、細胞内のリグニン含有量が高い場合には細胞が変形しにくかった。
また、リグニン中のアルデヒド構造の量が道管の変形と関係していることから、葉からの蒸散で道管内の負圧が大きくなる、強く乾燥した条件下で、アルデヒド構造の多いリグニンを作る株と野生種の株とでの生育を観察。アルデヒド構造の多いリグニンを持つ株では、野生種より道管の変形が少なく、乾燥に対する耐性が強くなっていると考えられる。
今後は穀物や野菜などの、より実用的な植物へ応用することで、乾燥に強い品種が作り出されることが期待される。

参考リンク:プレスリリース(東京農工大学)