企業にうれしい農業団地計画、羽生市で始動。
大規模農業団地計画が埼玉県羽生市で動き出し、注目を集めている。全体計画24haのうち先行する約9.5haに進出する3社が決定。農地中間管理機構(農地バンク)を活用して農地を集積して企業に貸し出す仕組みで、すでに進出企業の農業用ハウス建設が始まっている。
同様の取り組みは各地であるが行き詰まる例も多い。羽生ではなぜ順調なのか。
群馬県との県境、東京から約60kmに位置する埼玉県羽生市は稲作が盛んな地だが、後継者不足や耕作放棄地の増加が問題となっていた。そこで高収益の農業の確立を掲げ、農家の転作や市内外から農業への進出を促そうと、2018年3月に農業団地の構想を作成し、11月に公募を始めた。市が面積など企業の要望を聞いたうえで地権者と調整し、農地バンクが借り上げて企業に貸し出す。
先行させる農業団地は東北自動車道の羽生インターチェンジから近く、出荷や観光農園に有利な地域。9.5haに対して5件の応募があり、市への問い合わせは約40件あった。審査を経て進出が決まったのは、市内のスーパーと東京都内の農業資材メーカー、埼玉県内のハーブ農園の3社。いずれも20年の土地賃借契約を結ぶ。
企業が農業に進出する場合、問題となるのは広い農地の確保。知らない人や企業に土地を貸すことに抵抗を感じる人が多く、地権者との調整が高いハードルとなる。農地を相続した地権者が県外在住で連絡がつかないとか、地権者が多すぎて調整がつかないということも多い。
今回計画した農業団地全体の地権者は約80人、先行する9.5ヘクタールでは約35人で市内在住者が多く、しかもその多くがすでに農地を貸した経験があったこともスムーズに運んだ理由となった。
こういった手間を企業に求めないことが、企業が羽生に注目する理由の一つで、同様のプランを持つ自治体から視察が相次いでいる。