イネの光合成機能を増強。約3割の増収効果を確認。

イネや小麦など主要作物を増産するために、これまで多量の窒素肥料投与が行われてきたが、窒素肥料の多量投与は深刻な環境汚染の原因となる。急激な人口増加により世界的な食糧危機が懸念される中、環境問題と食糧問題を同時に解決するためには、同じ投与量の窒素肥料でより高い収量を得られる穀物を作る必要がある。
光合成で二酸化炭素を固定する触媒の働きをする酵素「ルビスコ」を1.3倍量に増強した遺伝子組み換えイネを使用した収量調査試験を、東北大学、岩手大学、国際農研の共同研究グループが実施。遺伝子組み換えを行っていないイネと比べて、同じ窒素肥料の施肥量に対して最大で28%の増収効果を確認。
日本では遺伝子組み換え技術を用いて作られた穀物の野外のほ場での栽培に制限があるが、2016年4月に栽培の承認を取得し、2019年までの4年間、厳密に管理された「遺伝子組み換え隔離水田ほ場」での栽培試験を実施。遺伝子組み換え前の親品種との比較で、玄米収量が17〜28%の増加を確認。生化学的解析の結果、組み換えイネの葉はルビスコの量と活性が増加し、それに伴い光合成速度の向上が観察された。遺伝子組み換えイネは現状ではすぐに農業現場に応用することはできないが、光合成の増強がイネ新品種の開発に応用できるとしている。