今後10年間の農業見通しは不透明。新型コロナウイルスにより不確実性が高まる。

世界的な広がりを見せる新型コロナウイルス感染症は、世界の食料供給網において空前の不確実性の原因となっている。経済協力開発機構(OECD)と国連食糧農業機関(FAO)は中期的な農業部門の課題を報告書にまとめ発表。

今後10年間、ほとんどの農作物は供給の伸びが需要の伸びを上回り、実質価格は現在の水準を維持、または下回ると予想。だが、新型コロナウイルスにより低所得国や低所得世帯の可処分所得が減少するため、フードセキュリティがさらに損なわれる可能性がある。1人当たりの平均食料供給量は2029年までに1日当たり約3,000kcal、タンパク質85gに達する。世界的に食生活が動物性食品や脂質などを多く含む食品の消費へと移行しているため、特に中所得国では食料構成に占める主食の割合は減少する一方で、高所得国では環境や健康に対する関心の高さから、動物性タンパク質から代替タンパク質へと切り替える動きが進むと見込まれる。
このため、食料輸入が総消費量に占める割合の多い国では開かれた透明性の高い国際市場がフードセキュリティ確保のため、ますます重要になる。
コロナウイルス後の直近の課題には、東アフリカとアジアのバッタ、ASF(アフリカ豚熱)、異常気象現象、主要国間の貿易摩擦などがある。食料システムは食生活や消費者の嗜好の変化に適応し、農業・食料サプライチェーンのデジタルイノベーションを利用する必要があり、報告書では不確実性の中でも生産的で回復力のある、持続可能な食料システムを構築することに投資することの必要性を強調している。

参考リンク:OECD