自然の不安定要素に対し、家庭でも食料や飲料水の備蓄が大事、食品産業事業者は自然災害に備えた事業継続計画や事業者間連携が重要。
農業白書では、食料の安定的な供給は国内の農業生産の増大を図ることを基本に、これと輸入及び備蓄とを適切に組み合わせることが必要とされている。穀物等の貿易量の変化について、2000年前後3カ年の平均と、2016年前後3か年の平均を比較すると、我が国では、輸入量、輸入相手国ともに大きな変化はなかった。
一方、世界全体では、とうもろこしの輸出は、ブラジルやアルゼンチンで大きく増加したが、日本のとうもろこし輸入量のシェアでは11%まで低下。かつての輸出国であった中国は輸入国に転じている。
大豆については、ブラジルの輸出が大幅に増加するとともに、中国の大豆輸入量シェアではブラジルが63%と大幅に上昇している。小麦については、最大の輸出国であったアメリカの世界シェアが低下し、ロシアからの輸出が増加している。
また、気候変動の影響による生産減少や、台風や豪雨、地震等の自然災害による農産物への被害や輸送障害等、食料の安定的な供給に影響を及ぼしかねないリスクが存在するとしている。
農水省は、不測の事態に備え、食料の安定的な供給に関するリスクの影響等を定期的に分析・評価し、2018年度は、食料の安定的な供給に影響を及ぼす可能性はないとした。
国内で頻発している自然災害のリスクについては、食料の安定供給を停滞させるリスク因子の顕在化を防止するための対応策がおおむね実施されているとしながら、営農施設の損傷、電気・ガス・水道の停止、家庭備蓄の欠如等、一部のリスクについては対応策の強化を図る必要があるとした。
国内における不作や輸入の大幅な減少等の不測の事態が生じた場合は、その影響を軽減する対策の内容等を示し「緊急事態食料安全保障指針」に基づき対応することとし、食料等の備蓄を行っている。米については、「政府備蓄米の適正備蓄水準」に基づき100万t程度を、食糧用小麦については、実需者において外国産食糧用小麦の需要量の2.3か月分を、飼料穀物については配合飼料メーカー等において、とうもろこし等の飼料穀物85万t程度をそれぞれ備蓄している。また、地方公共団体でも大規模な自然災害等に備え、飲料水や食料を備蓄している。
各家庭に対して当面必要となる食料や飲料水を用意しておくことを推奨し、2019年に、平素から食料の家庭備蓄を実践しやすくする方法や、要配慮者を持つ家庭が実践しやすくなる方法をまとめたガイドブックを作成している。
食品産業事業者においては、食料が安定的に供給されるよう、事業の継続や中断した場合の早期復旧が重要となり、事業継続計画(BCP)の策定や事業者間の連携強化が求められているが、自然災害を対象としたBCPを策定していた事業者は9.7%、他社との連携・協力関係を構築していた事業者は12.0%だった。