世界農産物市場の今後10年間の中期見通し。
OECD(経済協力開発機構)とFAO(国連食糧農業機関)は、両組織の加盟国政府及び農業関連組織の専門家から得た種々の情報を用い、世界農産物市場の今後10年間の中期見通しを「OECD-FAO農業アウトルック」として毎年発表している。
これによると、2017年の主要穀物、畜産物価格は前年と比べ大きな変化はなく、生産量では、穀物、主要な肉類、乳製品が2017年に記録的生産量に達し、穀物では備蓄量も最大となった。需要については、中国による需要増加の伸びは鈍化した。
今後10年間については、集約農業や畜産頭数の増加等、農産物及び水産物の生産量は2割伸びる一方、需要は人口増加率の低下や1人当たり消費量の停滞により伸びが鈍化することが予測されている。価格は、主要な農産物である穀物、油糧種子、肉類では低下する見通しとなっており、各農産物の備蓄量が多いことから、価格の低下傾向が回復する可能性は低いと予測。
穀物の生産量は、2027年までに13%増加すると予想しており、特にとうもろこし及び小麦については、ロシアが国際市場に台頭し、EUを抜いて最大の輸出国になる見通し。米については、タイ、インド、ベトナムが主要な供給源となる一方、カンボジア及びミャンマーが新たに供給源として浮上し、穀物全般の価格は実質的には僅かに下がると予測。
砂糖と植物油については、開発途上国の都市化により加工食品やインスタント食品の需要が更に拡大するため、1人当たりの摂取量は増えると予測。食料消費水準と食事構成の変化は、開発途上国で栄養不足、栄養過多、栄養失調の状態が続くことを示している。
OECDは、「農産物貿易政策に関する不透明さが高まり、世界的に保護貿易主義が高まることが懸念される中、食料安全保障の確保にとって重要な役割を果たす通商政策環境を輸出国、輸入国ともに開かれたものにしなければならない」、FAOは、「環境負荷が大きい投入量が多い資源集約型農業システムの問題への対処が必要であり、健康で栄養豊富な食料を供給する持続可能で生産性の高い食料システムを採用するとともに、環境と生物多様性を保護する必要がある」とした。