細菌と共生することで殺虫剤への耐性を獲得するカメムシ。
大豆の重要害虫「ホソヘリカメムシ」は、孵化後に共生細菌を獲得することで、後天的に殺虫剤抵抗性を有するが、そのメカニズムが解明された。
ホソヘリカメムシと共生する細菌はバクテリア「バークホルデリア」の仲間。バークホルデリアは100種を超える細菌グループで、イネもみ枯れ細菌病菌などに代表される系統、マメ科植物根粒菌などの系統、カメムシ類に腸内共生する系統の3つに分類される。
ホソヘリカメムシはバークホルデリアが体内にいない状態で孵化し、成虫になる前の若虫の段階で土壌に存在するバークホルデリアが体内に侵入し、共生する。共生後のバークホルデリアは、宿主カメムシの窒素老廃物をエサとし、代わりにカメムシが利用できる窒素化合物を供給していると考えられる。
バークホルデリアの中には、有機リン系殺虫剤のフェニトロチオンを分解する株(殺虫剤分解菌)が存在する。殺虫剤分解菌と共生したカメムシは、フェニトロチオンに対する抵抗性を獲得する。
フェニトロチオンを散布された土壌では、殺虫剤分解菌が急激に増加し、カメムシの殺虫剤分解菌への感染率が急上昇し、フェニトロチオン抵抗性を持ったカメムシが繁殖し、集団レベルで殺虫剤抵抗性が顕在する危険性があることが判明した。
今後は、カメムシ体内での解毒機構のメカニズム解明を進め、殺虫剤抵抗性害虫の発生を未然に防ぐ新たな害虫防除技術を研究していく。
参考リンク:研究成果(産総研)