微生物を電源にしてセンサーが動く。スマート農業向け燃料電池システム。
農研機構は旭化成エレクトロニクスと共同で、微生物燃料電池(Microbial fuel cell; MFC)を電源としてセンサーを駆動できるMFCシステムを開発した。
MFCは、発電細菌が、環境中に存在する有機物を分解して発電する新しいバイオ電池。発電細菌とは酸素がない環境で有機物を分解する際に電流を発生する性質を持つ細菌で、土壌や家畜ふん、堆肥などさまざまな自然環境に生息している。発電細菌は単独の細菌種ではなくとても多くの細菌種がある。
従来型のMFCは高価な材料が使われているので作製コストが高く、さらに電極などが劣化しやすい欠点があったが、農研機構は、ステンレス鋼の表面を炎で酸化させた電極をMFCの負極として使用することで、従来よりも1/10以下の低コスト、かつ長期の使用に耐えるMFCを開発した。このMFCは水田や池など水がある環境に設置できる。
MFCでセンサーを駆動させるためには、電気エネルギーを効率的に回収して出力電圧を上昇させるエナジーハーベスタが必要。しかし従来型のエナジーハーベスタの電気エネルギー回収効率は低く、実用化の障害になっていた。そこで、旭化成エレクトロニクスは、新しい超低消費電力型エナジーハーベスタを開発して、従来型では電力を回収することができなかった低出力のMFCからでもエネルギーを回収できることを実証した。
今回、炎酸化ステンレス鋼電極を用いたMFCと、新規エナジーハーベスタを組み合わせたシステムにより、CO2センサーを駆動させることに初めて成功。CO2センサーは温度センサーなどと比較して大きな電力を消費するので、これまでMFC電源によりCO2を測定できなかった。データ駆動型のスマート農業では気温や湿度、CO2濃度といった環境因子を多くの地点で測定することが必要となる。このMFCシステムは水田や池などにおいて、MFCを唯一の電源とした自立駆動型センサーの開発に利用でき、環境モニタリングへの貢献が期待される。