稲の「硫黄欠乏」各地で発生。
これまで、国内では通常起こらないと考えられてきた水稲の「硫黄欠乏」が各地で発生。生育抑制や収量低下が懸念されるが、硫黄を含む石膏(硫酸カルシウム)の投与での改善が見込まれる。
硫黄は植物の生育に欠かせない元素だが、日本では火山由来の成分が豊富に存在する。土壌に酸素が少ない時に硫化水素が発生して起こる生育障害の「秋落ち」防止の為、これまで農家では水田で硫黄を含む資材の使用を避けてきた。この、硫黄資材の不使用を徹底した結果、生育に必要な硫黄の量を確保できなくなった水田が出てきたと考えられる。
火山などが近辺になく、硫黄の供給が少ない河川や溜池から水を引く水田や、土壌に硫黄が豊富でも銅や亜鉛などの金属成分が多く、これらと硫黄が結合し植物が吸収しにくい化合物を作る水田では、発生のリスクが高まる。
栃木県では、2020年と2021年の2年間、硫黄欠乏と思われる症状が見られた圃場を対象に、硫黄資材である石膏を施用。10aあたり50kgと同100kgで実験した結果、硫黄資材を使用することにより茎数が増え、収量が最大で4割の増加が確認された。
従来の土壌診断には、植物が吸収しやすい状態の硫黄を調べる項目がなく、また、専門的な調査方法はあっても一般的な測定方法は確立されておらず、今後の開発が急がれる。
参考リンク:農業試験場ニュース(栃木県)