ゲノム編集食品、表示義務化せず。消費者庁「判別は不可能」。
消費者庁は、狙った遺伝子を切断する「ゲノム編集」技術で開発した食品について、食品表示を義務化せず、ホームページなどでの任意の情報提供を求める方針を示した。消費者団体などから食品表示を求める声があるが、安全面では従来の品種改良と同程度のリスクであり、科学的にも見分けられないことなどから判断した。早ければ年内にも「ゲノム編集」食品が流通する。
ゲノム編集は遺伝子の狙った部分を操作し、効率よく品種改良ができる。特定の栄養の多いトマトや収量の多いイネ、肉付きのいいマダイなどで開発が進んでいる。
国はゲノム編集食品について、届け出と食品表示の2段階で制度を検討した。前者については厚生労働省が届け出制度を10月1日から始める通知を出している。届け出は任意で違反しても罰則はない。
食品表示については、消費者庁が、義務化せずに任意の表示にすると発表。ただ、外部から加えた遺伝子が残る場合は、従来の遺伝子組み換え食品と同じ扱いで安全性審査が必要。ゲノム編集食品の開発者らは届け出前に厚労省に相談し、開発した食品が制度の対象になるかどうかの判断を受ける。対象であれば、有害物質や外部から加えた遺伝子がないこと、技術の詳細などの情報を提出し、安全性審査なしで販売できる。
ゲノム編集食品は自然に起こる突然変異や従来の育種技術などによるものと科学的に区別がつかない。同食品を規制していない米国からの輸入品を原材料に加工食品を作る事業者などに、表示を課しても対応できない。こうしたことなどから、消費者庁などは義務化は難しいと判断した。
厚労省は届け出をせずに販売するといった違反事例を見つけた場合、開発者などの情報をネット上に公開する。
制度に反対する声もある。消費者団体の日本消費者連盟などは安全審査と表示の義務化を求め、署名活動をしている。東京大学が2018年に実施した消費者の意識調査では、4~5割がゲノム編集食品を「食べたくない」と回答した。
海外では、アメリカは特に規制していない。欧州連合(EU)では欧州司法裁判所が、遺伝子組み換え食品と同様に規制すべきだと判断を示している。新たに流通を認める制度を作った国は特にない。