国産小麦、需要と供給にギャップ。
価格高騰が止まらない輸入小麦に対し、国産小麦の増産や切り替えを支援する緊急対策が打ち出されているが、需要が供給を下回る状態が続いている。
2021年産の国産小麦生産量は100万t。繰り越し在庫は前年より4万t多い71万tが見込まれる。国産小麦は、前年に「播種前契約」が結ばれるが、2022年産の産地の販売希望数量が88万7,000tなのに対し、実需の購入希望数量は79万6,000t。供給が需要を9万1,000t上回っている。これは、3年連続で豊作だったことや、新型コロナウイルス禍のため外食需要が落ち込んだことが原因と考えられる。
国産小麦の需給バランスが崩れている別の要因として、国産小麦の使いづらさがある。製粉業者が求める小麦は、特徴が少なくブレンドしやすい、汎用性の高いもの。対して国産小麦は近年、パンや麺などの特定用途向けが増えている。また、播種前契約で取引される国産小麦は、都市や地域によって収穫後の品質や収量にばらつきがあり、食味や食感、色など品質が一定に担保される輸入小麦と異なり製品の品質調整が難しい。輸入小麦の価格が引き上げられると、その分国産小麦の価格を引き上げる仕組みがあるため、価格面で優位にたつことも難しい。
物価高騰の緊急対策として、食品業者が小麦を輸入から国産に置き換えた場合の助成として100億円が計上されているが、その効果が発揮されるかは見通せない。
参考リンク:麦の需給に関する見通し(農林水産省)