天敵のコウモリが発する超音波で、ヤガ類を追い払う。

天敵のコウモリが発する超音波から逃げ出す習性を利用し、超音波発信装置を圃場に設置することでヤガ(夜蛾)類から農作物を守る技術を、農研機構と京都府農林水産技術センター他が開発。殺虫剤の散布回数の大幅な削減が可能に。

ハスモンヨトウ、シロイチモジヨトウ、ツマジロクサヨトウなど、翅の付け根に音を感じる「耳」を持つヤガ類は、コウモリの発する超音波を聞くと逃げ出したり動きを止めたりといった行動をとる。
行動試験と聴覚神経の応答パターンから、耳を持つヤガ類が共通して嫌う超音波の周波数や音圧などの音響パラメータを特定。超音波を水平方向に360度、上下方向に20度、半径25メートルの範囲で照射できる超音波発信装置を開発。スピーカー4台で2,500平方メートルの圃場をカバーできる。
実証では、栽培施設・圃場に産み付けられたヤガ類の卵塊数・被害株数などを比較。
・イチゴの栽培施設では、ハスモンヨトウの卵塊が最大で95%以上減少。
・長ネギの圃場では、シロイチモジヨトウの卵塊が68%減少。
・葉ネギの圃場では、シロイチモジヨトウの幼虫数・被害株数がそれぞれ90%以上減少。
超音波による防除は自然界にすでにある行動抑制技術のため、周囲に悪影響を及ぼさずに農薬の使用量を削減できる。今後はICT技術などと連携し、装置の導入だけで蛾類害虫を自動的に防除できる仕組みづくりを目指す。

参考リンク:プレスリリース(農研機構)