気温上昇、乾燥などの気候変動、農業への打撃深刻。

地球温暖化による干ばつなどの激しい気候変動が、世界各地で農業を直撃している。オーストラリアでは果樹栽培農家や酪農家が記録的な少雨と高温に悩まされ、南ヨーロッパのスペインでは農作物が育たない乾燥地域が拡大している。
オーストラリア気象局によると、シドニーの北方、オーストラリア南東部は果樹栽培が盛んで、南半球が春を迎える9月は翌年の収穫に向けてリンゴが芽吹く時期だが、平年の降雨量は年間765.8mmに比べ、今年は8月までにわずか136.7mmしか雨は降っておらず、さらに年末まで乾燥した天候が続くという。
オーストラリア南部では2017年から雨不足が続き、年々深刻になっている。2017年1月から2019年8月までの32カ月間の降雨量が1900年の観測開始以来最少を記録した地域もあるという。
気温が平年より高いことも状況の悪化に拍車をかけている。オーストラリア全体でみると、2018年は108年に及ぶ観測史上3番目に気温の高い年だった。2019年も気温が高い状況が続く。
その影響で、豪州で最も農業が盛んな地域が干ばつに見舞われ、2018年以降の穀物の国内生産量は過去10年の平均より2割近く少なくなり、12年ぶりの穀物輸入を行った。今年はカナダから小麦を輸入する。
スペイン南部アンダルシア州の盆地は砂漠と呼ばれるほど乾燥がひどく、川が流れていた谷底は干上がっている。この盆地ではかつて川が流れ、小麦畑もあったが、今はたまに雨が降った時にか細い川が流れるだけ。一方、気温は年々上昇し、夏は50度近くまで上がるようになった。
スペイン政府の2016年の報告書によると、水不足で農作物が生育しにくい乾燥・半乾燥地域は、2000年はスペイン全土の28%だったが、今世紀末には5~6割になる見通し。気候変動に加えて開発による土壌の悪化で、スペイン全土の4分の3では将来、アンダルシア州の盆地のように農業や経済活動が難しくなる可能性がある。アンダルシア州は1980年ごろから農地開発が進み、ビニールハウスを使った野菜栽培が盛んな地だが、栽培に必要な水は地下水を使っている。大学の研究機関は、「くみ上げる地下水の量は年々増加しており、このままでは地下水は枯渇してしまう」と警鐘を鳴らしている。