実装されたスマート農業の実例

「食料・農業・農村白書」は、スマート農業の普及に必要な周辺環境の整備が進展している実例を紹介した。
北海道妹背牛町は基盤整備に伴って地下水位制御システムと自動走行トラクタ。妹背牛町では標準2.2haへの大区画化と地下水位制御システムが導入され、稲の生長に合わせた細かな水位調整を行うことが可能となった。
鹿児島県農業開発総合センターでは、茶のロボット摘採機を開発。タッチパネルを押すだけで、センサーで茶園の形状を検知し自動で方向転換するため、蛇行した茶園でも高い精度で畝間の茶葉の刈取りまでを行っている。
三重南紀農業協同組合では地域の農業改良普及センター、NECと連携して、「農業技術学習支援システムを活用した栽培技術支援プラットフォーム」を構築。極早生温州みかんの摘果方法やマルチ栽培におけるかん水タイミング等、受け継がれていない熟練者の栽培技術やノウハウをデータ化し、タブレット端末等を用いてクイズ形式で学習することで、未熟練者でも短期間で平均的な管理技術を身につけられるようにした。
青森県はブランド米「青天霹靂」の品質管理に衛星画像を利用する方法を実用化。8月から9月にかけて撮影した衛星画像とアメダス気象データを組み合わせて作成した収穫適期マップを、津軽地域の13市町村の農業者にWebアプリで提供している。2018年には、地域の農業者約1,000人のうち500人以上が利用している。約8千枚の水田一枚一枚について適切な収穫タイミングを伝える。
佐賀県ではドローンで撮影した高解像度の画像解析により検出した病害虫の発生箇所にのみ農薬を散布することで、追加的な労力をかけずに減農薬栽培を実現している企業「イケマコ」を紹介。
パプリカ栽培を行うタカヒコアグロビジネス(大分県)は、プラントエンジニアリングを得意とする親会社が長年培った技術を基に農業用の「地熱利用型熱交換システム」の導入により、施設面積2万9,108平米の大規模な環境制御型パプリカ生産施設での燃料費の大幅削減を実現した。二酸化炭素施用装置や細霧装置等を組み合わせた環境制御により、パプリカの周年出荷を可能とし、2018年は前年と比べ、年間生産量が285.3tから446.8tへと大きく向上した。このほか花卉や畜産での最新技術、クラウド上でのバックオフィス業務の一元管理の導入例、高知県の「次世代型こうち新施設園芸システム」なども紹介。