ジャガイモシストセンチュウの孵化を促す物質を発見。

世界中で食糧生産を阻害している重大害虫「ジャガイモシストセンチュウ類(PCN)」の孵化を誘導する新規化合物「ソラノエクレピンB」を発見。
ソラノエクレピンBの生合成を遮断することで、孵化を大幅に低減できることも分かり、新たな防除法の開発への道筋ができた。

PCNの卵は「シスト」と呼ばれる硬い殻に守られている。卵は乾燥や低温、殺線虫剤などに高い耐性を持ち、宿主作物が現れるまで土壌中で10年以上休眠状態のまま生き続ける。宿主が栽培され、その根から孵化促進物質(HF)が分泌されることによって孵化する。
これまでPCNに対応するHFは1990年代に発見された「ソラノエクレピンA(SEA)」のみだったが、新たに発見された「ソラノエクレピンB(SEB)」は、土壌中の微生物によりSEAに変換される。
また、トマトを用いた分析から、SEBは植物自身が生合成する化合物であることが判明。
さらに、SEB生合成遺伝子を探索したところ、複数の遺伝子を発見。ゲノム編集により遺伝子機能が失われるノックアウト体を作成したところ、非ノックアウト体と比べSEBの生産が完全に阻害され、PCNの孵化率が大幅に低下することが分かった。
今後は、孵化促進物質を生産しない品種の育成や、宿主作物がない状態で孵化を促進し餓死させる自殺孵化剤などへの利用が考えられている。

参考リンク:プレスリリース(科学技術振興機構)