ハエトリソウは触れた回数を記憶できる。
ダーウィンが「世界で最も不思議な生物」と呼んだ食虫植物「ハエトリソウ」。ハエトリソウは、補虫葉の中にある感覚毛と呼ばれる部分に30秒以内に2回の接触刺激を受けると葉を閉じる、というメカニズムを備えている。
ハエトリソウは感覚毛に触れられた刺激を「憶え」、虫などが動いて2回目に触れると捕食する。これは、もっとも原始的な「記憶」現象であると言える。捕食に対するハエトリソウの運動は、1873年に動物と同様のシステムで動いていることが報告されているが、この仕組みと記憶現象に関しての研究は進んでいなかった。
最新の研究では、ハエトリソウは感覚毛への刺激により記憶物質が分泌され、その量が一定以上に達すると運動が起きると考えられている。記憶物質とみられる物質を抽出し、接触刺激を与えなくても運動が起こるかを調べた実験では、分泌された化学物質が一定の量を越えると捕食の運動が起こることが証明された。このメカニズムは高等動物の神経伝達機構によく似ており、遺伝的に離れた高等動物と食虫植物とで記憶現象に関与する共通の機構が見つかれば、ハエトリソウの原始的な記憶は生物の記憶現象のルーツである可能性が出てきている。
参考リンク:自然科学研究機構 基礎生物学研究所