農作物を病害虫から守る。〜国際植物防疫年2020。
2020年は、国連食糧農業機関(FAO)が定めた「国際植物防疫年2020」。これは、植物につく病害虫が世界各地に蔓延することを防ぐことが重要ということを世界全体で認識しようという趣旨のもとに制定されている。
世界の食料の大部分は植物由来で、その20〜40%が病害虫の被害で失われていると考えられ、全世界で何百万人もの人々が十分な食料を入手できずにいる。また、農業を収入源としている農村地域に深刻な損害を与えている。これを未然に防ぐための仕組みが植物検疫。
植物検疫のきっかけとなったのは、1850年代にアメリカからフランスにブドウ苗とともに侵入した「ブドウネアブラムシ」によるブドウの甚大な被害だった。当時フランスではこの害虫被害によりワイン生産量が3割程度にまで落ち込んだと言われ、この時ドイツが自国へブドウネアブラムシ侵入を阻止するためにブドウ苗の輸入を禁止、これが輸入植物検疫の始まりとされる。他にも、1845年アイルランドのジャガイモ疫病やアメリカで2005年に発生したカンキツグリーニング病などが、大規模な被害をもたらしている。
日本は四方を海に囲まれ、他国と国境を接していないため防疫を意識する機会は少ないが、日本でも20数年の歳月と204億円の費用をかけて根絶させたウリミバエの例がある。
一人ひとりが植物防疫を正しく理解することが、日本や世界の農業や緑を守ることにつながる。2020年は、そのことを考えるのに良い機会となる。