植物の重力感知、仕組みを解明。
植物は重力の方向を感知して成長方向を調節する性質(重力屈性)を持つ。
重力を感知する物理的な現象は確認されていたが、これまで分かっていなかった細胞内で伝達される仕組みが、基礎生物学研究所、埼玉大学、大阪大学、熊本大学による共同研究で明らかになった。
植物の中にある重力屈性を行う器官には、重力の方向に沈む粒(アミロプラスト)を含む細胞が存在する。
これまでは、動物の感覚器官にある平衡石の仕組みから類推した、植物でもアミロプラストが細胞内に力を加えることで重力を認識する「メカセンシング(機械受容)モデル」が想定されていたが、今回の研究でメカセンシングとは全く異なる仕組みで重力を認識していたことが明らかになった。
研究ではシロイズナズナを用いて分子遺伝学的解析を実施。重力のかかる方向にアミロプラストが沈んで細胞膜に近づくと、アミロプラスト内にあるLZYタンパク質が細胞膜に移動する。このLZYタンパク質と相互に作用するRLDタンパク質(成長に関わるホルモン「オーキシン」輸送に関わるタンパク質)を発見。細胞膜に移動したLZYタンパク質がRLDタンパク質を呼び込むことで、オーキシンの濃度を高くする。
こうしてオーキシン濃度が高くなった細胞は、反対側の細胞より多く成長することにより、根では重力方向に、茎など地上部分は重力方向と逆方向に伸びていく。
LZYタンパク質は多くの植物にある。イネでは重力の影響を受ける葉や根の伸長角度が収量と関係するため、今回解明された仕組みは、将来的に農作物の改良に役立つものと期待される。
参考リンク:プレスリリース(基礎生物学研究所)