土壌還元消毒、「糖入り」資材で深層まで効果。

農研機構などの研究グループは、トマトの青枯病や線虫など地下部の病害虫防除で、新しい土壌還元消毒技術を確立した。資材は「糖含有珪藻土(けいそうど)」か「糖蜜吸着資材」を使う。慣行の米ぬかやふすまより深い部分まで消毒ができる。従来使われていた液体の糖蜜より軽く、散布労力も少ない。抵抗性台木への高接ぎと組み合わせ、総合的な技術として普及を進めていく。
新技術では2種類の資材で効果を確認。糖含有珪藻土は、アミノ酸調味料などの生成過程で産出される副産物で、糖蜜吸着資材は、家畜の飼料で大豆皮にサトウキビ糖蜜を付着させたもの。資材に含まれる糖が水に溶け、下層まで浸透するのが特徴。どちらも粉状・粒状で、散布しやすい。糖含有珪藻土は販売準備を進め、糖蜜吸着資材は飼料メーカーが販売している。
10a当たり1~2tを肥料散布機などで散布する。ロータリーで2~3回耕し、深部まで資材を混和する。かん水チューブを設置し、空気が入らないようフィルムで被覆し、1平方m当たり100~150リットルをかん水し、約3週間、還元状態にする。新しい資材は、地下約60cmまで還元状態にできた。ふすまなどは地下30cmまでだったが、さらに深層まで効果があった。
還元消毒で青枯病菌とネコブセンチュウの密度は低下する。実証では、無処理で80%だった発病率を約10%に軽減。青枯病の防除効果は2作目以降も継続し、経済的に2~3年に1度の消毒が有効とした。抵抗性台木への高接ぎを組み合わせれば、防除効果が高まることも明らかに。既存資材の糖蜜でも地下60cmまで還元消毒ができるが、粘度が高いため、希釈作業が重労働になり、かん注用の混入器を準備する必要もあった。
内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)で取り組み、農研機構では4月にマニュアルを作成している。