「ゲノム編集食品の表示義務なし」が与える不安。
消費者庁は、ゲノム編集技術で品種改良した農水産物の大半について、生産者や販売者らにゲノム編集食品であると表示することを義務付けないと発表し、早ければ年内にもゲノム編集食品が市場に出回る見通しだが、表示がなければゲノム編集食品かどうか分からず、安全性に疑問を持つ消費者から不満や不安が出ている。
ゲノム編集食品が店頭に並ぶにあたって予想される、消費者が気にしていることがある。まず、「国による安全性の審査がない」ことである。遺伝子組み換え作物は、食品会社が毒性や発がん性の有無などのデータを国の食品安全委員会に提出し、厳格な審査を受けることになっているが、ゲノム編集食品の場合には、他の生物から新たな遺伝子を組み込んでいないことから、届け出だけで審査は必要ないとした。
ゲノム編集食品であることの表示を義務付けないという、消費者庁の判断に不安が集まっている。遺伝子の切り張りは、交配による品種改良と同じメカニズムなので自然のものと見分けがつかず、表示義務違反があっても摘発が難しいから義務付けないと理由付けしているが、安全な食料の流通を考える場合、これは本末転倒ではないかとの指摘もある。
欧州連合(EU)では、遺伝子組み換え作物と同等に扱い、当局が検査し、流通記録を保管、販売時に表示する義務を課している。アメリカでは表示義務はないが、消費者団体が流通経路をさかのぼり、バイオ企業の特許を調べ、独自の表示をしようと試みている。
狙った遺伝子を切り取る編集精度は格段に進化した。しかし切り間違いのリスクはゼロではなく、将来世代に影響が表れないという保証はない。ゲノム編集食品を知らないうちに食べてしまうのを不安に思う消費者がいるのも当然である。