世界の遺伝子組換え作物の作付け合計1億9,170万ha。世界70カ国が飢餓、栄養不良、気候変動の対応策として遺伝子組換え作物を導入。
国際アグリバイオ事業団(ISAAA)は、遺伝子組み換え(GM)作物の商業栽培に関する年次報告書「遺伝子組換え作物商業化の世界動向:2018年」を発表した。これによると、2018年のGM作物の栽培面積は、世界で1億9,170万haとなり、17年より190万ha増加。栽培または輸入を通じてGM作物を導入している国は70カ国。このうち栽培している国は26カ国となった。栽培面積はGM作物の商業栽培が始まった1996年の113倍。いまやバイオテクノロジーは、世界で最も急速に普及している作物テクノロジーとなっている。
GM作物の栽培面積が多い国は、アメリカ、ブラジル、アルゼンチン、カナダ、インドで、この5カ国で世界のGM作物栽培面積の91%を占めている。欧州では、スペインとポルトガルで、ヨーロッパアワノメイガ防除のため、GMトウモロコシが栽培されている。また、GMダイズは世界でもっとも導入が進んでいて、世界のGM作物総栽培面積の50%を占めている。
2018年には、打撲班や褐変の低減、アグリルアミド産生低減、ジャガイモ疫病耐性の形質を併せ持つジャガイモ、害虫抵抗性と乾燥耐性を備えたサトウキビ、果肉が褐変しないリンゴ、高オレイン酸ナタネとベニバナなど、さまざまな形質をもつ多様なGM作物が市場で利用できるようになっている。インドネシアではJember大学と味の素の官民提携で開発された乾燥耐性サトウキビが初めて栽培された。
ISAAAは、国連の「世界の食料安全保障と栄養の現状」や「2017年食糧危機に関するグローバル・レポート」を引用して、世界の「飢餓は3年連続で増加し、10年前のレベルまで後退している」。「飢餓と栄養不良は拡大を続け、48か国の約1億800万人が危機的あるいは深刻な食糧危機にある」と指摘。
そのうえで、「世界中でこれほど多くの家族の暮らしに影響している地球規模の課題に対処するためには、収量の増加、害虫への高い抵抗性、栄養価の改善といったより良い形質を備えるように開発された遺伝子組み換え作物が不可欠である」「世界の食料安全保障を強化するためには、農業バイオテクノロジーだけが重要なのではないが、様々な分野の解決ツールの中でも重要な科学的ツールであることは間違いない」という指摘。