日米貿易協定をどう評価するか。TPPと対比。
日米貿易協定が正式署名されたことで、焦点は国会での承認案の審議に移った。昨年9月の「日米共同声明」に沿って、農産物の自由化水準がTPP(環太平洋連携協定)など過去の協定の範囲内にとどまったかどうかがポイント。
昨年9月の「日米共同声明」では、日本側の農産物の市場開放水準について、TPPを念頭に「過去の経済連携協定が最大限」とした。農林水産物のうち最終的に関税を撤廃する品目の割合はTPPの82%に対し、日米協定は37%。
TPPでは米国産米に最大7万tの輸入枠を設け、一部の米の調製品や加工品は関税を撤廃または削減をしたが、日米協定では輸入枠を設けないとし、関税撤廃や削減の対象から「除外」した。
判断が難しいのが牛肉。関税率についてはTPPと同様に9%までの削減だが、発効時にTPP参加国と同じ税率にする。
米国向けに緊急輸入制限措置(セーフガード=SG)を新設し、2020年度の発動基準数量は近年の輸入実績未満だが、TPPの見直しまではTPP向けのSGと併存する。その間、アメリカおよびTPPのSGは事実上発動しない。
豚肉やワインなどもTPPと同様に関税を削減・撤廃するが、発効時にTPP参加国と同じ税率に下げる。一方、アメリカは日本産牛肉の低関税輸入枠を実質的に拡大する。現行の年間200tから、6万5,000tまで広がった。TPPでは日本向け輸入枠は最大6,250tだった。だが枠内の関税は無税で、輸入枠を超えた場合の関税(26.4%)も15年で撤廃としていた。どちらが日本に有利かは評価が分かれるところ。
アメリカの自動車や同部品の関税撤廃についても、TPPでは期限を明記したが、日米協定では、できずに継続協議となった。そもそもTPP水準の農産物の自由化にも懸念は残っている。国会審議では日米貿易協定の徹底した検証が必要となる。