街の夜間照明が、都市に生息する昆虫の冬眠を妨害。
都市に生息する昆虫は、夜間照明にさらされ続けると、本来冬眠に入る10月〜11月になっても冬眠せず、また都市の温暖化(ヒートアイランド)の影響を受け、冬眠開始時期が遅くなることが実験で判明。
多くの昆虫は、1日の中の暗い時間の長さを読み取って冬眠(休眠)に入る時期を決定する。この季節性を明瞭に示すナミニクバエを対象とし、都市環境が昆虫の季節性に及ぼす影響を調べた。
室内実験では、環境条件を秋に設定し、様々な照度の夜間照明を組み合わせた飼育環境を準備。あわせて都市の気温上昇の影響を調べるため、20度と15度の2種類の温度を用意。夜間照明が月明かり程度の0.1ルクスの照明にさらされ続けると、冬眠に入る個体の割合が低下。また、気温20度の環境でも、15度より冬眠に入る個体が減った。
屋外での実験では、夜間照明の少ない照度約0.2ルクスの地点と、夜間照明が多く照度も約6ルクスある地点を設定。夜間照度が低い地点では多くの個体が10〜11月に冬眠に入ったが、夜間照度が高い地点では11月を過ぎてもほとんどの個体が冬眠に入らなかった。
夜間照度の低い地点で都市と郊外を比較したところ、郊外では9月下旬から冬眠に入る個体が増えたのに対し、都市では10月中旬まで増えなかった。このことから、夜間照度の上昇が冬眠を阻害し、高い温度は夜間照明による冬眠阻害を促進すると考えられる。
今後は、異なる条件の都市環境での調査や、広い昆虫種を対象とした実験を行い、人間の生活が他の生物に与える影響を解明していく。
参考リンク:大阪市立大学