害虫の唾液に、植物の免疫力を弱くする作用。
害虫の唾液内で共生する微生物が、加害される植物の免疫反応を抑えることが、ハスモンヨトウとシロイヌナズナを用いた東京理科大学の実験で明らかになった。
植物は害虫にただ無抵抗に食べられるのではなく、食害を感知すると植物は防御の中心的な役割を持つジャスモン酸が増加し、消化を阻害するタンパク質を増やすなどして身を守る。また、それに干渉し抑制する作用を持つサルチル酸がある。実験では、ハスモンヨトウの唾液が、これら植物ホルモンのバランスにどう影響するかについて、通常の状態で育てた幼虫から取り出した微生物を含んだ唾液と、無菌状態で卵から育てた幼虫の唾液を、傷をつけたシロイヌナズナの葉に落とすと、微生物を含む唾液ではサルチル酸の動きが活発になり、ジャスモン酸の動きは抑制された。実際に幼虫に葉をたべさせると、無菌状態で育てた幼虫より、通常の状態で育てた幼虫の方が葉を食べた面積が大きくなった。
幼虫の唾液には70種類の微生物が含まれており、その中の「表皮ブドウ球菌」が植物ホルモンのバランスを崩し、免疫力を抑えることが判明。ただ、なぜそのような働きをするかは不明で、今後の研究での解明が待たれる。
植物と害虫の相互作用メカニズムを解明することで、農薬に依存しない次世代の有機農法の開発につながると期待される。
参考リンク:プレスリリース(東京理科大学)