「みどりの品種育成方針」のポイント。

「みどりの品種育成方針」にて、今後10年間で開発を目指す品種は大きく分け、
(1)CO2ゼロエミッション化(2)化学農薬の使用量低減(3)化学肥料の使用量低減(4)気候変動対応(5)食料安全保障、の5つの目的に分類される。

(1)CO2ゼロエミッション化
2020年度の日本の温室効果ガス排出量のうち、農林水産分野はCO2換算で全体の4.4%、約5,084万tを占める。このうち、最も多いのは燃料燃焼による排出の1,855万tだが、水田から排出されるメタンが1,200万t(24%)ある。農用地土壌から排出される一酸化二窒素(N2O)も581万t(11%)あり、水田、畑土壌からのメタン・N2O削減に向けた技術開発が求められる。
(2)化学農薬の使用量低減
化学農薬の環境への負荷が課題。その一方で気候変動などからくる病害虫の蔓延や、新たな病害虫の発生懸念もある。そこで、化学農薬のみに依存しない多様な防除方法を適切に組み合わせる総合防除を推進する必要がある。この総合防除で有効となる病害虫抵抗性品種を全ての作物で育成することが求められる。
(3)化学肥料の使用量低減
環境負荷の低減や地政学的リスクを起因とした調達懸念などから、化学肥料の低減が求められている。有機質肥料や下水汚泥肥料など、化学肥料置き換えの取組みも重要だが、品種育成においても、化学肥料を低減しても栄養や収量の低下を招かない新品種が求められる。
(4)気候変動対応
年平均気温は100年で1.28度上昇しており、2020年の年平均気温は統計開始以降で最も高くなった。気候変動の影響を緩和し、かつ病害虫に抵抗性を持つ品種の育成が求められる。
(5)食料安全保障
2020年度の食料自給率は38%。自給率の高い米や野菜に比べ、コムギは17%、食用ダイズは26%と低い。輸入依存度の高いダイズの生産を強化するためには、タンパク質含有率の高い、多収品種の育成が求められる。また、輸入コムギの代替として利用できる米粉用米の育成も求められる。

参考リンク:みどりの食料システム戦略(農林水産省)